SOCCER PUSH UP! powerd by a-ticketSOCCER PUSH UP! powerd by a-ticket

勝利したG大阪と敗れた浦和の差

2015.11.29

csc_2015|ピンチをチャンスに変えたG大阪が延長後半に決勝弾

 1−1で延長戦に突入したJリーグチャンピオンシップ準決勝は、思わぬプレーが伏線となり、スコアが動くこととなる。
 時計の針は117分を刻んでいた。後方でボールを回していたガンバ大阪に、浦和レッズの選手たちが猛然とプレスを掛ける。G大阪のCB丹羽大輝は、チェイスしてくる浦和のFWズラタンから逃げるように後ろを向くと、GK東口順昭へバックパスをした。
 マン・オブ・ザ・マッチに選ばれた東口もさすがにこのプレーには驚きを隠せず、「ゴロで来ると思ったけど、まさか越えてくるとは思わなかった」と振り返る。なぜなら、丹羽が蹴ったボールは浮き球であり、かつGK東口の頭上を越えていき、ゴールポストに直撃したのだ。もしオウンゴールになっていれば、珍プレーとして永遠に語り継がれそうな場面だった。それだけに思わず、会場もどよめく。延長後半も終わりが近づき、寒さも強くなってきたスタジアムには、一段と緊張感が立ち込めていただけに、一瞬、肩の力が抜けるようなシーンだった。MF今野泰幸も「あのプレーにはさすがに目玉が飛び出そうになりました」と苦笑いした。
 ただ、これがG大阪の決勝弾へとつながっていくから、サッカーは面白い。
 ボールがポストに当たりこぼれると、慌ててGK東口が蹴り出して、右SBのオ・ジェソクにつなぐ。そのパスを中央で受けた遠藤保仁は、素早く前線のパトリックへ展開する。ゴール前は3対3の数的同数だった。パトリックは、右サイドを駆け上がってきた米倉恒貴へパス。米倉は、森脇良太がマークにつこうとした瞬間、躊躇うことなく逆サイドへ浮き球のラストパスを送った。浦和の守備はこのプレーにより完全に揺さぶられる。そして、最後は走り込んだDF藤春廣輝が、豪快に右足を振り抜くとゴールネットを揺らした。
 まさにピンチの後にはチャンスが訪れると言わんばかり。G大阪の劇的な決勝弾となった。長谷川健太監督は「まさか延長で丹羽がああいうプレーをやるとは思っていなかった」と、やはり苦笑いを浮かべる。ただ、「逆にそれが浦和の選手たちの集中を削いだような感じになった」とも話した。
 あわやオウンゴールというプレーをした丹羽はミックスゾーンに現れると、「もう、いじられまくりです。チーム全員にいじられました。監督にも『何やってるんだ。頼むぞ』って感じで言われましたね。ただ、何も触れられないほうが嫌ですね。逆にいじってほしいです」と反省しつつも、照れ笑いを浮かべた。

csc_kasiwagi|ボールを持たれても焦ることのなかったG大阪

 ただ、この得点へのプロセスがあまりのインパクトを残したため、試合内容もこのワンシーンばかりが切り取られてしまうが、延長戦を含む120分を振り返ったとき、完全に押していたのはホームの浦和だった。
 ポゼッションで上回る浦和は、柏木陽介を中心にボールを保持していく。一方のG大阪は、チーム全体の守備意識が高く、遠藤、今野のダブルボランチ、さらには大森晃太郎ら2列目からの守備でボールを奪取しようと試みた。中央がダメならサイドからと、浦和は宇賀神友弥、関根貴大のサイド攻撃を使って相手ゴールに迫ろうとする。ときにはサイドからピッチを広く使った攻撃を、また、ときには1トップで起用された李忠成、シャドーの武藤雄樹、梅崎司の多彩なパスワークを駆使して、G大阪ゴールへと押し入った。
 ただし、これはG大阪からしてみれば、想定内でもあった。延長戦でこの試合のハイライトを作ってしまった丹羽だが、守備に関してはこう語っている。
「流れの中から失点はしていないですし、最後の最後で僕が弾き返せばと思っていた。DFラインをコントロールして、全体をコンパクトにして延長まで戦えていた。ボールを持たれてもじれずに弾ければ、たとえ持たれても問題ないと思っていた。浦和も素晴らしい攻撃をしていましたけれど、それをしっかり僕たちが弾いて、カウンターも何回か作れていましたし、自分の中ではゲームをコントロールできていたと思う」
 事実、浦和は決定機を作るも、作るも、ゴールを割ることができなかった。逆にG大阪は、47分、相手のミスを見逃さず、先制点を挙げた。DF那須大亮が森脇へ出した縦パスを大森がカットすると、ゴール前に走り込んだ今野にラストパス。これを今野が右足で流し込み、リードを奪った。
 72分には浦和もCKから森脇が放ったヘディングシュートがバーに当たりこぼれたボールを、途中出場したズラタンが頭で押し込み同点としたが、それ以上にもチャンスを作っていた。後半だけでも49分に梅崎がミドルシュートを、87分にも流れるようなパスワークから最後は柏木がシュートを打った。後半アディショナルタイムの90+4分には、森脇のクロスからゴール前で武藤が決定的なヘディングシュートを放った。だが、東口がマン・オブ・ザ・マッチに選ばれたように、再三、好セーブに遭い、追加点を奪うことができなかった。
 言ってしまえば、浦和は延長含め23本のシュートを放ちながら、一度しかG大阪の牙城を崩せなかったのである。

csc_fujiharu|G大阪の一瞬のスキを逃さないメンタリティ

 逆に、耐え凌いだ先に好機が訪れることをG大阪の選手たちは知っていた。だからこそ、特に90分までは浦和に攻め込まれ続けたG大阪の選手たちは、追いつかれてもなお焦ることも、慌てることもなかったのである。
 先制点をマークしただけでなく、120分間を通して中盤の攻守を支えた今野が語る。
「今年はこういう苦しいゲームや流れが引き寄せられないゲームが多かったけど、その中でも勝ちを引き寄せてきた。それが大事な試合でも出せた。オレらは我慢強く戦えるようになってきているし、一瞬のスキを逃さないメンタリティを持っている」
 長谷川監督も試合後の会見で話したが、G大阪はこの埼玉スタジアムで、相手こそ違うがナビスコカップ決勝で完敗していた。その経験やリーグ戦には年間3位に終わった悔しさが、この試合では活きていた。丹羽も今野に続く。
「失点後も落ち着いて切り替えてできていた。ACLとナビスコの教訓を今日の試合に活かせたんじゃないかなって思います。だから、自信を持って次の試合に臨める」
 逆に浦和には自分たちの信念——理想とするサッカーを貫くほか、手段や工夫がなかった。得点が奪えずとも決定機を作れているがゆえに、いつかゴールが決まるという理想を追い求めてプレーし続けているようにすら映った。
 ただ、結果的に勝者は、内容で勝った浦和ではなく、好機を逃さなかったG大阪である。勝負の世界においては、勝ったものだけが称賛される。浦和とG大阪に差があるとすれば、やはり、そのメンタリティになるのであろう。内容と結果が異なるからこそ、その差が如実に表れる形となった。
 3−1でG大阪が勝利し、チャンピオンシップ決勝のカードはサンフレッチェ広島とG大阪となった。昨シーズン三冠を成し遂げたG大阪と、その前にJ1連覇を達成した広島の戦い。レギュレーション改定後のJ1は、ともに勝者のメンタリティを備えた者同士の決勝となった。

文/原田大輔
写真/佐野美樹

PAGE TOP
  • INDEX

NEW ENTRYNEW ENTRY

NEWSNEWS

PICK UP MATCHPICK UP MATCH

COLUMNCOLUMN

WORLD FOOTBALL COLUMNWORLD FOOTBALL COLUMN

INTERVIEWINTERVIEW

PREVIEW OF SPECIAL MATCHPREVIEW OF SPECIAL MATCH

【固定】twitter
【W杯予選】狙い通りの完璧な勝利で、日本代表が6大会連続W杯出場決める!
国内実績十分の“助っ人”たちの活躍が光るJリーグ[COLUMN]
【W杯予選】久保の活躍でタイに大勝も、露呈した課題
ストライカーの活躍はチームの成績と比例する[COLUMN]
【石川大徳】後編「ケガで苦しんでいる選手たちのサポートがしたい」
広島を支えた佐藤寿人と森﨑浩司が最後の試合で見せた姿勢[COLUMN]
広島・森崎浩司が現役引退を決意したきっかけと思い広島・森崎浩司が現役引退を決意したきっかけと思い
【関根貴大】仕掛け続けるサイドアタッカー。ボールに執着する姿は子犬のよう【PLAYER’S FILE vol.07】
【中町公祐】ピッチ内では泥臭く、ピッチ外では爽やかなボランチ【PLAYER’S FILE vol.06】
【伊東純也】抜群のスピードでピッチを駆け抜ける“IJ”【PLAYER’S FILE vol.05】
【江坂任】物腰の柔らかい紳士だがプレーは泥臭い「王子」【PLAYER’S FILE vol.04】

PICK UP MATCHPICK UP MATCH

RSS