まるで、それまでがすべての伏線だったかのように、ドラマは最後の5分に集約されていた。
12月2日、Jリーグチャンピオンシップ決勝の第1戦が万博記念競技場で行われた。サンフレッチェ広島が試合終盤の劇的なゴールでガンバ大阪に3-2で逆転勝利を収め、アウェイゴールの差においても、ホームで迎える第2戦に大きく弾みをつけた。
86分にG大阪のオ・ジェソクが一発退場となり、数的優位に立った広島は、1-2というビハインドの状況もあって攻撃に打って出る。91分、右サイドでFKを得ると、キッカーの柴﨑晃誠は直接クロスを入れるのではなく、近くにいた青山敏弘へパスをつなぐ。これでタイミングがずれると、青山がふわりと上げたクロスに佐々木翔が頭で合わせて2-2に追いついた。
ただ、広島が入れた攻撃のスイッチは、同点となってもなお切れることはなかった。時計の針は第4の審判が掲げた5分間のアディショナルタイムを終えようとしていて、おそらくラストプレーに近かったであろう。
スローインを得たG大阪の今野泰幸がパトリックにめがけて投げたスローインを、広島の森﨑和幸が猛然とダッシュして奪い、前にいた青山につないだのである。森﨑和はそのまま青山を追い越してリターンを受けると、さらに左サイドを駆け上がってきた途中出場の山岸智に展開した。山岸は素早くゴール前に折り返すと、ドウグラスがシュート。打ち損なったが、こぼれ球をこれまた途中出場していた浅野拓磨がシュートした。これもDFに当たり跳ね返ったが、詰めていた柏好文が右足を振り抜き、ゴールネットを揺らした。
劇的な逆転弾を決めた柏好文は「こぼれて来いって思っていた」とシュートシーンを振り返った。
|今、何をすべきかを選手それぞれが判断した広島
勝敗を分けるポイントはいくつかあるが、1つは86分にオ・ジェソクが退場して、広島が数的優位に立ったことが挙げられる。これにより広島に攻撃姿勢が芽生え、リスクを冒してでも前に出ようという意識が生まれた。
指揮官の森保一が選手たちの状況判断を称える。
「相手は10人になり、前線にパトリックを残してカウンターを狙っていた。そこのリスクマネジメントはしながらも、得点のチャンスをうかがっていくこと。うちの選手たちが試合の流れを読んで、プレーできたことが、あの決勝点につながったと思っています」
自らのイージーミスによりG大阪に先制点を献上し、2点目も自らがマークしていた今野にゴールを決められていた森﨑和は「どこかでそのミスを取り返そうと思っていた」と語る。さらにポイントを挙げるとするならば、名誉挽回しようとする姿勢が、3点目のきっかけとなったスローインのインターセプトを生み、柏のゴールにつながった。
また、途中出場した選手たちが活躍したのも大きかった。3点目は、まさにクロスを上げた山岸、DFに当たりはしたがシュートした浅野、そして逆転弾を決めた柏と、それぞれが絡んでいる。
特に柏は69分に途中出場すると「ポイチさんから『全部、柏のほうから行くぞ』という指示が出てピッチに送り出してもらいました」と本人が話したように、ボールを持つたびに右サイドから仕掛け、80分のドウグラスのゴールにつながる働きを見せた。G大阪のパトリックや倉田秋が決定機を外す一方で、広島の途中出場した3人は、それぞれ得点に絡んだという差が、まさに3-2という逆転劇に至る要因となった。
キャプテンマークを巻く青山敏弘が喜びを噛みしめる。
「みんなで戦っていることを示せた。今日は(佐々木)翔が前の試合から先発で出ていますけど、彼もまた結果を出してくれたし、交代した選手も結果を出してくれて感謝しかないですよね。(第2戦も)勝ってみんなで喜びたい。3点目が決まったときは、落ち着いてはいられなかったですけど、何より広島の力を示せたことがうれしかった」
|激闘の180分はまだ最初の90分が終わっただけ
ただ、試合自体はG大阪が主導権を握っていた。特に前半は、G大阪の遠藤や今野が絶妙なポジショニングを取り、広島に効果的な縦パスを入れさせなかった。また、サイドにおいても、藤春廣輝がミキッチと互角に渡り合い、激しい攻防を繰り広げていた。結果的に3失点も、うち2失点はオ・ジェソクが退場して数的不利となってからであり、CBを担った丹羽はポジティブに捉えてもいた。
「逆に優勝するために、絶好のシュチュエーションが整ったと思っています。個人的には手応えしかなかった。終始、自分たちがゲームをコントロールしていたし、それが最後、ぽんぽんって入れられてしまっただけなので悲観する内容では決してないと思います。早く忘れて、記憶から消して、次の試合に臨みます」
まだ試合は180分の激闘の半分が終わったに過ぎない。第1戦の勝者となった広島の指揮官・森保も、勝利に喜ぶことなく気を引き締める。
「まだ第1戦が終わっただけなので、次の試合につないでこそ、今日の勝利が生きてくるわけで、気を引き締めて第2戦に臨みたいと思います」
広島にとって大きな1勝であり、G大阪にとって痛い1敗ではあるが、まだすべてが終わったわけではない。第1戦から壮絶なストーリーを描くドラマは、残り90分でエンディングを迎える。
文/原田大輔
写真/佐野美樹














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