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ステージ優勝を決めた鹿島に見た“勝つすべ”[COLUMN]

2016.06.27

03_MS1_4340|試合前に強化部長から小笠原にかけられた言葉

 試合終了の笛が鳴ると、3万人を越えた観客がドッと歓声を挙げる。ただ、ピッチにいる選手たちは淡々としていた。ガッツポーズするわけでもなければ、喜びを爆発させるわけでもない。互いに握手して歩く姿は、安堵感とでも表現すればいいだろうか。

 鹿島アントラーズが、6月25日に行われたJ1リーグ1stステージ第17節で、アビスパ福岡に2−0で勝利し、ステージ優勝を決めた。Jリーグ最多タイトル数を誇る常勝軍団である。まだ志半ば、1stステージに優勝しただけとはいえ、Jリーグにいつもの風景が戻ってきたように感じられた。

 勝てば1stステージ優勝が決まる福岡戦、ウォーミングアップを終えた鹿島の選手たちがロッカールームへと引き上げていくと、一人で歩く小笠原満男のもとに、近寄っていく影があった。強化部長の鈴木満だった。
「こういう何かが懸かった試合では、若い選手たちはプレッシャーを感じるかもしれない。(警告などの)カードをもらうかもしれない。だから、お前がなんとかしてくれ。頼んだぞ!」

 短い会話だったが、二人にはそれだけで十分だった。チームの歴史を見守ってきた強化部長から、鹿島の黄金期を知り、幾多のタイトルを獲得してきたキャプテンへのメッセージ——鈴木はそれだけを伝えると、小笠原の肩をポンポンと二度、叩いた。

 試合立ち上がりは、やはり鹿島は苦しんだ。FWウェリントンを中心に、果敢に攻め込んでくる福岡のアグレッシブさが上回っていた。

「相手は失うものはないし、ガンガン来るのは分かっていた。だから、こっちも相手の裏を狙って、前からプレスを掛けていこうと、試合前からみんなで話していたんですけど、難しかったですね」

 そう話したのは、殊勲の先制点を挙げた山本脩斗のコメントだ。
「苦しかったですね。(前節の)神戸戦も試合の入り方が悪くて、今日こそはって思って入りましたけど、やっぱり堅かった。自分自身もいつもだったら、こうできるのに、ああできるのにというプレーができず、チームとしても簡単なミスが多かった」

 そう話したのは、試合を決定付ける2点目を挙げた土居聖真の弁だった。
 鹿島はなかなか思うように攻撃の形を作れない。ボールを奪って攻撃に転じようとしても、らしくないパスミスやズレにより、自らチャンスをふいにしていた。そうしたチームの精神状態であり、雰囲気を感じ取っていたのが、やはり小笠原だった。彼は何度も両手を広げて下向きに動かすと「落ち着け」とチームに発信した。タイミングよく駆け上がれずにいる選手がいれば、ボールを持ちながら手を動かし、「上がってこい」と、指示を送り続けた。

01_MS1_4572|山本脩斗の先制点には伏線があった

 そんなキャプテンのメッセージを感じ取ったのか、チームにスイッチが入ったのは、16分だった。右サイドにいた小笠原から逆サイドの山本へと大きくサイドチェンジが通る。揺さぶったことにより、DFが手薄と判断した山本は、クロスを挙げるのではなく、自らドリブルで切れ込み、相手を抜くとシュートを放ったのだ。

「それまで守備でもミスが多く、どこかで流れを変えなければと思っていた。だから、思い切って切り込みました。あの流れでCKを獲得して、一度、ニアでタイミングよく合わせられていたので、それがきっかけとなって今日はうまくいけるかなって思いました」

 伏線になっていた。自らのシュートで得たCKから、ニアで合わせてヘディングシュートを打っていた。それが26分の先制シーンにつながっていたのだ。山本が回想する。

「相手はゾーンで守ってくるから、ニアのストーンのところには誰かが入っているけど、その分、他が空いているとは感じていた。だから、得点シーンの場面ではブエノにニアへと入るように言ったんです。そこで自分がタイミングよく飛び込めば、いけると思った」

 まさにその考えが奏功した。ブエノをおとりにした山本は、ペナルティーエリアのライン付近から柴崎岳のクロスに合わせて飛び込むと、叩き付けるように得意のヘディングシュートを決めた。それは黄金期を彷彿させるかのような得点だった。流れが悪くとも、うまくいかなくともセットプレーから得点を決めて勝つ。まさに鹿島らしいゴールだった。

「脩斗くんのゴールで、勢いに乗ることができた」と話すのは2点目を決めた土居だ。

 次は今シーズン何度も見られた、ショートカウンターからだった。37分、ダニルソンと杉本太郎が接触してボールがこぼれると、素早く柴崎岳が拾って前に仕掛け、左サイドに開く金崎夢生にパスを通す。金崎の折り返しは逆サイドへと流れたが、遠藤康が攻撃をやり直すと、今度は右サイドに顔を出した金崎が、ドリブルで仕掛けてマークを引きつけた。そしてラストパスを送ると、これを土居が右足で流し込み2点目を奪った。

「夢生くんがいいパスをくれたので決めるだけでした。自分もここ最近はゴールやアシストという結果を出したかったし、結果的に自分のゴールが1stステージ優勝につながったことはよかった」

 2点のリードを奪ってもなお鹿島は攻めた。前半終了間際も後半も、3点目を奪いにいった。それは、この試合を機にサガン鳥栖へと移籍する青木剛であり、契約終了となるジネイをピッチに立たせたいという思いもあったが、それ以上にサッカーにおいて2−0というスコアが怖いことを知っていたからだ。結果的に2−0で試合を終えたが、相手の息の根を止めようと、ゴールに迫る鹿島はしたたかで、かつサッカーを知っていた。

02_MS1_4459|選手たちが語る決意。早くも視線は次の試合

 ステージ優勝した鹿島ではあるが、シーズンを考えれば、まだ1stステージを終えただけであり、チャンピオンシップへの出場権を獲得しただけに過ぎない。

「この勝利に浮かれて次の試合に負けたと言われたくない。次の試合にも勝って、さすが1stステージの覇者だなって言われたい。今日は喜びを噛みしめて明日からは次の試合に向けてサッカーに打ち込みたい」と話した土居は、口を真一文字に結ぶとミックスゾーンを後にした。

 山本も同様だった。ステージ優勝に浮かれることなく、DFらしい課題を口にした。

「得点した後にどうしても引いて相手の攻撃を受けてしまうところがある。そこで敢えて引かずに、前から行くことで、相手に危険な場面を作らせないことにもなるし、追加点を奪うことにも繋がる。もっと質の高い守備をしていきたい」

 前半、小笠原はウェリントンと言い合いになり、試合が中断したときも、するするとその輪から抜け出すと、植田直通に指示を送っていた。まるで一人だけ異次元にいるかのように、常に冷静だった。その小笠原は語った。

「ここ何試合かは、(内容的に)よくない試合が続いているし、失点してもおかしくない場面もあった。今日の試合も、勢いを持って入りたかったですけど、そうじゃないときでもこのチームは勝つ術を持っているのが強み」

 ただし、と、続けた
「前(に強かったとき)はこんなもんじゃなかった。みんな、もっと勝つために何をするべきか、どうするべきかを分かっていた」

 ステージ優勝では、もっとも大切な「勝つ」というクラブの哲学を取り戻すことができた。だからこそ、である。

「この先も勝っていくためには、内容ももっとよくしていなかなければならない。勝ってよしとするのではなく、これからは内容も突き詰めていきたい。この先、負けていけば、今日の勝利も、何の意味もなくなっていく。タイトルを取ったものにしか、分からない喜びというか、味っていうんですかね。アントラーズというチームはタイトルを取って、勝つことで強くなってきたチーム。その意味では昨年ナビスコカップで優勝できたことも大きいですけど、本当のJリーグのタイトルはこんなもんじゃない。満足してはダメ」

 もはやこれ以上の言葉は必要ないだろう。そこに鹿島の強さはある。

文:原田大輔
写真:佐野美樹

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