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窮地に立たされる広島の中で光る柏好文。仕掛けるプレーに込める思い。[COLUMN]

2017.05.02

|精度を欠き、連動性もない。自信のなさが判断の遅れにつながった

左サイドでボールを持てば、必ずと言っていいほど、ドリブルで仕掛けていた。柏好文のプレーには、苦しむチームを救おうとする気概が、いや魂が感じられた。気がつけば、自然と柏の動きを目で追っていた。試合が終われば、取材ノートには柏の名前と背番号ばかりが躍っていた。

「コンディションも含めて、自分の状態がいいので、仕掛ければ何かが起きると思っている。一対一なら絶対に抜けるという自信もあるし、仮に2人(マークに)来れば、その分、どこかが空くと思うので、もっと、もっと仕掛けていきたい」

9試合を終えて1勝2分6敗の15位と、サンフレッチェ広島は苦しんでいる。アウェイで臨んだJ1第9節のFC東京戦も、前半こそ0−0で折り返したが、68分にセットプレーから丸山祐市にゴールを許すと敗戦した。

代名詞である3−4−2−1システムこそ変わらないものの、味の素スタジアムのピッチで見せたそのサッカーは、3度目のJ1優勝を達成した2015年はもとより、昨シーズンと比べても、目を疑うほどに未完成に映った。最終ラインのビルドアップから縦パスを入れても精度を欠き、かつてのチームメイトである髙萩洋次郎に潰された。1トップの工藤壮人が前線で身体を張っても、距離感が悪く、連動性もないからか、2本、3本とパスがつながらない。うまくいかないからプレーは消極的になり、必然的にミスも増える。自信のなさは一つひとつのプレーに伝播し、局面での判断が遅れ、まさに自滅する形で追い込まれていった。試合後、髙萩に「ボールをつなぐところで単純なミスが多い」と、指摘されるのも頷ける展開だった。

|常に仕掛けるから、自然と左サイドの柏にボールは集まる

だから、まるで誰かに救いを求めるかのように、ボールは左サイドへと集まっていく。前半20分にも、26分にも、さらには33分にも、柏は自らドリブルで仕掛けると、相手の守備をこじ開けようとした。後半も47分、66分と……数え切れないほど勝負した。ときにはサイドを深く抉ってクロスを上げれば、中央に切り込み、強引な突破も試みた。ただし、DFを抜き切るところまでは完遂しても、チームとしてゴール前の絵が描けていないから得点は遠かった。

「仕掛けるときは、自分がゴールを奪うという気持ちでいるので、シュートのイメージも持っている。誰か(チームメイトが)来たら、パスを出せばいいやくらいの感覚ですね」

FC東京戦でも、これ以上はないくらいに仕掛けていたが、それでも強いて柏に「さらに」を聞いてみた。「難しいですね」と考え、一拍おいてから、彼はこう語ってくれた。

「ゴール前での迫力も含めて、気迫と怖さを出していかなければ得点につながらない。ゴール前に掛ける厚みだったり、なだれ込んでいくような迫力が必要。ボランチの選手もそうですし、シャドーも、逆サイドも、ゴール前に入って行く動きができればと思うし、そこは要求していきたい」

ややうつむきがちにミックスゾーンを通る他のチームメイトとは異なり、自ら立ち止まって話をする柏の言葉に、深く頷いたのは次の発言だった。

「チームとしての形があって、戦術があって、その中で戦っていくことは最低限だと思いますけど、そこにはまりすぎて、自分の良さが出せないのであれば、逆にその戦術も最大限に発揮できないと思う。チームと個の微妙なところをそれぞれが感じながらも、個を出していければ、もっと相手にとって怖い攻撃ができると思う。もともと、ポテンシャルは高いチームですからね」

|ネガティブな要素からプラスのものは生まれない

自分の得意な形でボールを受けられないのであれば、勝負できる位置に呼び込めばいい。「(柴﨑)晃誠さんとは関係性は築けているし、いい距離感で配球できている」。柏が常に仕掛けられるのは、自分の得意なエリア、タイミングでパスを引き出しているからに他ならない。まさに柏の強気なプレーは、チームへのメッセージでもあるのだ。

「何とかエネルギーを伝えたいという思いでやっているし、練習からもそういう雰囲気を作りたい。僕は残留争いをしていたチームから広島に来たし、そこはいろいろと感じ取りながらやっています」

そう言うと、柏はさらに続けた。

「広島はもともと勝てるチームだし、勝つことを知っているチームだと僕は思っているので、きっかけをひとつつかめば、ひとつ乗り越えれば、もっともっと自信に溢れた、エネルギーのあるプレーが生まれていくと思う。ネガティブな要素からプラスのものは生まれないし、消極的にしかならない。だから、自分がチームのエネルギーになれるように積極的な姿勢を見せられるようにしていきたいなと思います」

メンバーが入れ替わり、連係だけでなく、攻撃の形から守備のやり方まで、チームは新しいスタイルを作り直している段階ではある。だが、柏はそこをエクスキューズにはしなかった。

「認識としては、そう(新しく作っている)かもしれないけど、求められるのは結果だと思いますし、そこを言い訳にはできない。作っていく段階だったとしても、結果は残していかなければならないですよね」

チームは結果が出ず、窮地に立たされている。それでもなお希望を抱くのは、柏の言葉に熱があり、そのプレーに光りがあるからだろうか。

筆者が在京であることを知っている彼は、去り際に「いつ広島に来るんですか」と聞いて来た。自信がなければ、不安に支配されていれば、おそらく言えないセリフだろうと感じた。「そのうちね」と濁したが、近いうちに柏の言葉の真意を確かめに行きたくなった。

文:原田大輔
写真:佐野美樹

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