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【森﨑和幸 -サンフレッチェ広島-】前編「戦い方も安定していないという思いがどこかにあった」

2014.12.26

int_kazuyuki_1x 心には溢れそうな熱い思いを秘めている。誰にも負けないチームへの思いも抱いている。だが、彼はいつも一歩後ろに下がり全体を見据えている。サンフレッチェ広島の森﨑和幸とはそういう男だ。
 分かる人だけが分かってくれればいい。多くの言葉で伝えるよりも姿勢で示せばいい。彼の立ち居振る舞いや行動からは、そうしたメッセージが伝わってくる。
 ピッチでもそうした存在感を見せる。まるで試合全体が、今後の流れすら見えているかのように冷静に状況を読み取り、チームをコントロールする。それはただ単にクラブ在籍15年目を迎えた最古参であるから、33歳とベテランの域に達したからというわけではない。彼のサッカーに取り組む姿勢やこれまでの積み重ねが、ピッチの指揮官とも言われるプレーヤーへと成長させたのだろう。
 彼にとって2014年シーズンは歯がゆい思いばかりだった。シーズン開幕前に足首を負傷し、その痛みを抱えながらほぼ1年間をプレーすることになった。また、チームは3連覇を目指す中で苦しみ、結果的に8位でシーズンを終えることになった。
 だが、チームが過渡期を迎える中で、踏みとどまれたのは、森﨑和がいたからかもしれない。痛みを抱えながらも一度も言い訳することのない姿は、若手にプロとしての姿勢を示したはずだ。冷静にチームを分析し、早々に危機感を抱いたからこそ、チームは前へ進むことができたはずだ。
 サンフレッチェ広島のすべてを知ると言っても過言ではない森﨑和の言葉に耳を傾ける。

|足首に痛みを抱えながらも、一度も言い訳は言わなかった

——サンフレッチェ広島にとっても、自身にとっても、今シーズンはいろいろな思いがあった1年だったかと思います。シーズン中に話を聞いたときも、シーズンが終わらないと話せないことが多いというのがお約束のようになっていましたよね。改めて2014年の開幕前まで遡ると、リーグ3連覇を目指す中ではどういう思いで迎えたシーズンでしたか?

「3連覇という目標に関して言えば、意識しすぎないようにしていましたね。J1初優勝した次のシーズンも意識せずに入ったことで、結果的にいい方向に結果が出た。だから今年も去年と変わらず、自分たちがディフェンディングチャンピオンだとかは考えずにやろうと思っていました」

——そうした中、自分自身としては開幕前のキャンプで右足首を負傷した。

「あれはゼロックススーパーカップの1週間くらい前のことだったと思います。キャンプ中の練習で足首を捻ったんです。ゼロックススーパーカップには出場したかったので個人的にはちょっと焦りました。ただ、検査の結果、そこまでたいしたケガではないと言われていたし、2、3日して練習に戻れれば、大会にも間に合うかなと。それで練習には戻るには戻ったんですけど、なんか痛みがひかない……僕自身、今までのサッカー人生の中で、あまり足首を負傷した経験がなかったのもある……テーピングで足首をガチガチに巻いて練習に復帰したんですけど、全力でプレーできないからパフォーマンスが上がらないんですよね。これは厳しいかな、チームに迷惑かけちゃうだろうなと思い、森保(一)監督に相談して、ゼロックススーパーカップに出場することは諦めたんです」

——練習はできるけど、自分としてはそのプレーに納得できていなかった?

「痛みのほうが気になって、結局、思い切ったプレーができない。まだ、そのときはシーズン初めですし、長いシーズンを考えたら、ケガを治すことを優先して考えようと、自分の中で切り替えたんです」

——ただ、結果的に捻挫だけでなく、軟骨を痛めていて、その痛みを抱えながらシーズンを戦うことになった。

「(森﨑)浩司とか、捻挫した経験のある選手に話を聞いたら、しばらく痛みは残ると言われていたので、ある程度は仕方がないのかなと思っていた。これくらいの痛みは許容範囲なんだろうなって。それが結論から言うと許容範囲じゃなかったってことなんですよね。練習のときはずっと痛くて。練習から痛み止めの注射を打つわけにもいかない。痛みを感じながら練習するからコンディションが上がらない。悪循環ですよね。ディフェンスのところであと一歩が出ないというのもありますし、攻撃でもドリブルでボールを運んでいて相手が来たときに切り返そうと思ったら足に痛みが走る。だから、プレーの選択肢が劇的に減りました。できるプレーが限られていて、精神的なストレスが半端なかった」

——ただシーズン中、そのケガを一度も言い訳にすることはなかった。

「言いたくなかったです、それは。結局、それは言い訳でしかないですよね。ピッチに立てば関係ないじゃないですか。プロの世界というか、プロは結果を求められている。結局のところ、やれるか、やれないかなんです。痛みを抱えているから、このくらいしかやれないで許されるものではない。だから、どちらかと言えば、隠してプレーしたいという思いでしたね」

——痛みを抱えていることでの歯がゆさはずっとあったわけでしょ?

「周りに理解してもらいたいという思いはありましたけど、痛みって自分自身にしか分からないことじゃないですか。周囲に『こういう痛みがあって、ここが痛いんだよね』って言ったところで、僕も逆の立場だったら、『そうなんだ』って思いますけど、だからといって、プレーが変わるわけじゃない。チームメイトも試合のときに注射を打っていることは知っていたかもしれませんが、試合になったらそんなものは関係ない。『あっ、カズさん足痛いから、こういうプレーはできないのか?』とは、みんな思わないでしょ」

——その痛みはシーズン通して消えることはなかったの?

「(10月5日の)J1第27節柏レイソル戦でハムストリングを痛めて、少し休んだら、足首の痛みが和らいだんですよね。検査しても、画像上ではそれほど変わらないという診断だったんですけど、プレーの感覚というか、痛みとしては耐えられるくらいになった。だから、ケガから復帰してからのJ1残り3試合は痛み止めも打っていない。それもあって、J1第32節のヴァンフォーレ甲府戦ではPKを獲得するようなプレーができたんです(笑)。今シーズンは1年通して痛みと付き合う期間が長かったこともあって、トータルのコンディションとしては最後の最後までいい状態とは言えなかったですね。ただ、ずっと抱えていた痛みが和らいだだけに、ナビスコカップ決勝の舞台には立ちたかったという思いは今も残っている」

——4年前のナビスコカップ決勝で佐藤寿人選手が感じた悔しさがよく分かったのでは?

「そうですね。本当にヒサ(佐藤寿人)の気持ちは痛いほど分かりました。自分が出場して負けるのはもちろん悔しい。でも、自分が出られなくて負けるほうがさらに悔しいんだなということを知りましたね」

2|シーズン序盤から抱いていた危機感

——チームの話に戻るけれど、シーズン序盤は決して悪い内容ではなかったよね?

「シーズン序盤は試合数が多すぎて、正直、チームとして試合をこなしているという感覚に陥っていたところもある。すごいうまくいっている感覚ではなかったけど、連敗もなかったし、悪くはないなと。ただ、リーグ連覇していただけに、当然、自分たちのハードルも上がっているし、周囲の見る目も変わっている。ワールドカップによる中断期間前は、連戦による疲労もありましたし、チームのコンディションが良ければもっと勝ち点が稼げていたという試合もあった。それだけに満足はできていなかったですけど、最低限の結果は残せたかなと、そういう感覚ではいましたね」

——ただ、そうした中でもシーズン序盤から危機感を持っていたよね?

「確かにその頃から言ってましたよね。今年も何人か選手が入れ替わったというのもありますし、オフの期間が短かったというのもある。加えてオフ明けのキャンプをはじめとする練習期間も、それほど長く時間を取れずにシーズンインしたこともある。練習でももっと確認したいなとか、連携を高めたいなっていうことも感じていたけど、それができないままシーズンに入ってしまった。試合で勝ちながら連携を高めていければとは思っていても、そう簡単にできることじゃない。連戦を重ねる中では、それを修正していくこともできなかった。だから、2012年、2013年と比較すると、なんかこう……チームとしての戦い方も安定していないという思いがどこかにあったんです」

——今シーズンを振り返ると、連覇したシーズンにはあり得なかったような失点がチームとしても増えた。先制点を奪うことがチームの強みではあるはずなのに、先に失点してしまう試合も多かった。

「失点の場面を振り返れば、その多くが自滅というか、自分たちに原因がある。その理由は1つではない。これという明確な答えはないですが、いくつか挙げるとすれば、慢心もあっただろうし、守備の対応に問題もあった。加えて、本当に頭と身体が疲れていたというのもある。ただ、シーズンが終わった今、思うのは、優勝したからこそ、連覇したからこそ、戦う相手のことだったり、自分たちのことだったりと見えてきたこともある。これをチームとしてまた活かしていければと思っています。優勝しなければ経験できなかったことが本当に多いんです。そこはポジティブに考えていますね」

——それこそサンフレッチェ広島は、ワールドカップによる中断明けの試合でうまく勝ち星を積み重ねることができなかった。

「なんとか踏みとどまって、上位を狙える位置で中断を迎えて、そこから夏場が勝負だなと思っていた。ここでいいスタートを切れれば、秋にはいい形で優勝争いができるんじゃないかというイメージを持っていたんですけど、自分たちとしてもあり得ないような躓き方をしたので、そこがかなり痛かったですね。決定的だったのは(8月2日の)J1第18節で鹿島アントラーズに1-5で負けた試合。ただ、その前に横浜F・マリノスには1-2で負けているし、大宮アルディージャにも3点を先取しながら同点に追いつかれていた。柏レイソルには5-2で勝ちましたけど、実際はもっと取られていてもおかしくない試合だった。柏戦は結果だけを見れば、完勝に見えるかもしれませんが、個人的にはもうこのときには危機感が募っていましたね。それが結果となって顕著に現れたのが鹿島戦だったというだけで、結果的に自分が感じていたとおりの結果になってしまった」

(取材・文/原田大輔)

<プロフィール>
森﨑和幸●もりさき・かずゆき
1981年5月9生まれ、広島県出身。サンフレッチェ広島所属。MF。背番号8。177cm/75kg。サンフレッチェ広島ユースを経て2000年にトップチーム昇格。双子の兄弟である森﨑浩司とともにサンフレッチェ広島一筋で在籍15年目。戦術眼、状況判断に優れ、ピッチの指揮官として君臨する。守備的MFとして攻守のバランスを保ち、2014年のリーグ戦ではパス回数1位、インターセプト回数1位を誇る。

<Information>
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