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支配者が去ったプレミアリーグは新時代へ突入

2013.12.26

1|チームが低迷する中、徐々に評価を上げた香川真司

 ウィンターブレークがないイングランドでは、クリスマスをシーズン前後半の境目と考える。その区切りを迎えた今、前年王者のマンチェスター・ユナイテッドが苦しんでいる。
 クリスマスに8位という順位は、同時点で12位だった1989-90シーズン(最終順位13位)以降でクラブワースト。やはりアレックス・ファーガソンという“守り神”の不在はクラブに重くのしかかり、オールド・トラッフォードには優勝した昨シーズンまでのような威圧感がないともっぱらだ。
 デイヴィッド・モイーズ新監督は、開幕から試行錯誤を続けている。特にサイドの選手起用は流動的で、その犠牲になったのが加入2年目の香川真司だった。香川は攻撃に多様性をもたらす存在としてファーガソン前監督が白羽の矢を立てた選手だったが、今シーズン序盤のモイーズ監督は、サイドにアントニオ・バレンシアやダニー・ウェルベック、アシュリー・ヤングといった直線的で単独の局面打開を得意とするタイプを重用したため、自由に動き回って周囲との連携で勝負する香川の居場所は用意されなかった。コンフェデレーションズカップや日本代表の親善試合に参加した影響でコンディションをピークに持っていけなかったこともあるが、香川のあまりの冷遇ぶりに現地では「1月のドイツ復帰」が盛んに報道された。
 しかし、風向きは徐々に変わった。皮肉にもチームのプレー内容が「退屈」と批判されて結果も出ず、ウェルベックやヤングの信頼度が低下するにつれ、技術の高さや“エンターテインメント性”を期待される香川や、若き天才MFアドナン・ヤヌザイにチャンスが回ってくるようになったのだ。
 そして少ないチャンスをアピールに結びつけた香川の評価は、モイーズ監督の頭の中で確実に上がってきている。まだゴールがないのは香川本人も気にしているマイナスポイントだが、前半戦のうちにチーム内の「居場所」を取り戻すことができたのは好材料だ。後半戦、早いうちに得点を取って余裕が生まれれば、昨シーズン終盤のように輝きを放つ可能性は十分にある。

|吉田をはじめ、苦しむ日本人選手たち

 浮上の兆しが見える香川に比べ、他の日本人選手たちは非常に苦しい。サウサンプトンの吉田麻也と李忠成は、香川以上に厳しい前半戦を過ごした。
 開幕時点でマウリシオ・ポチェッティーノ監督の「構想外」だった李忠成は、他のアタッカーが移籍期限ギリギリで退団したことによりトップチームへと復帰できたが、ここまでリーグカップ2試合の出場に留まり、プレミアリーグデビューはまだお預けの状態。冬の移籍市場では、Jリーグへの復帰が取り沙汰されている。
 昨シーズンはレギュラーだった吉田は、香川と同じく代表戦の影響でプレシーズンの定位置争いに出遅れ、CBの4番手に降格してしまった。彼にとってさらに不運だったのは、吉田不在のチームが開幕から絶好調だったことだ。新加入のDFデヤン・ロヴレンを中心とする堅守と、ポチェッティーノ監督のハイプレス戦術が見事に機能し、サウサンプトンはシーズン序盤のサプライズチームとなった。
「好調なチームは変えるな」という格言通り、吉田に出番が回ってこないのも仕方がなかった。過密日程の最中だった第14節のアストンヴィラ戦でプレミア初出場の機会をもらったものの、ここで失点に絡んでしまい、アピールできなかったのも痛かった。チームの調子はやや下降気味だが、吉田自身ももう少し我慢の時間が続くかもしれない。
 同じくアーセナルの宮市亮も、リーグ前半戦の主役となったアーセナルの中で埋もれてしまった。ここまでプレミアリーグでは、攻撃陣にケガ人が続出していた第5節のストーク戦に途中出場したのみ。主力が続々復帰した11月以降は、ベンチ入りすらできていない。今はU-21チームやカップ戦をメインにプレーしているが、おそらく1月の移籍市場で期限付き移籍の話が出ることだろう。

2|クリスマスに首位に立ったのはリヴァプール

 そのアーセナルは、レアル・マドリーから獲得したメスト・エジルが華麗に攻撃のタクトを振るい、ここまでリーグを引っ張ってきた。しかし、第16節マンチェスター・シティ戦を3-6で落とし、続くチェルシー戦も引き分けたことで首位から陥落。クリスマスを目前にして伏兵リヴァプールにトップを譲った。
 5年ぶりに“クリスマス首位”の座を手に入れたリヴァプールは、ブレンダン・ロジャーズ政権2年目でパスサッカーの精度を飛躍的に向上させた上、序盤はダニエル・スタリッジ、その後はルイス・スアレスとダブルエースがいずれもゴールを連発し、名門復活の兆しを見せている。
 マンチェスター・Uがスランプに苦しむ今、優勝はこのトップ2にリーグ最強の攻撃陣を擁するマンチェスター・C、ジョゼ・モウリーニョが帰還したチェルシーを加えた4チームのいずれかで決まりだろう。ただ、何度も「勝負弱さ」に泣いてきたアーセナル、ライバルに比べて選手層が薄いリヴァプール、アウェーで安定感を欠くマンチェスター・C、頼れる「9番」が不在のチェルシーと、どこも不安要素を抱えており、優勝争いの行方は全く読めない。
 また、上位4強がチャンピオンズリーグ出場圏内の「4位以内」を確保できる保証もない。優勝は厳しくとも、マンチェスター・Uはトップ4に目標をシフトして追い上げてくるはず。ギャレス・ベイルの穴を埋められず、12月にアンドレ・ヴィラスボアス監督を解任したトッテナムも、コーチから昇格したクラブOBのティム・シャーウッド新監督がうまくチームを乗せることができれば、得点力を快勝して上位争いに食いこめる戦力を持っている。
 さらに、エヴァートン、ニューカッスルという2つの古豪もビッグクラブにひけをとらない戦いぶりで上位をキープしており、虎視眈々とトップ4を狙っている。
 ファーガソンという“支配者”が去り、混戦が予想された今シーズンのプレミアリーグは、ここまで開幕前の予想を上回る群雄割拠の様相を呈している。まだシーズンは折り返し。2014年に何が起こっても、決して不思議ではない。

<文:寺沢薫>

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