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不振は明るい未来への兆候か——マンチェスター・Uの現状。

2014.10.03

wfc_goal プレミアリーグ開幕から6試合で、2勝2分け2敗の7位。トッテナムやリヴァプール、エヴァートンよりも上の順位だと考えれば、新生マンチェスター・ユナイテッドが「危機的状況」だと断言するのは大袈裟かもしれない。だが、ここまでの対戦相手はスウォンジーにサンダーランド、昇格組の3チームにウェストハムと、まだ強豪と戦っていないことを考えると、非常に寂しい戦績だ。
 ルイス・ファン・ハールは天使か、悪魔か?
 オランダの名将に対して、国内ではこんな論調が燻っている。10月から11月にかけて、彼らはエヴァートン、チェルシー、マンチェスター・シティ、アーセナルと対戦する。ファン・ハールと選手たちにとって真価が問われる2カ月間。それを前に、赤い悪魔が抱える問題点とその原因、そしてプレミアリーグの絶対王者を取り戻すための光明をまとめてみたい。

wfc_set|守備崩壊の理由と、そこから見える問題点

 ユナイテッド不振の最たる理由は守備にある。これは誰の目にも明らかだ。
 昇格組のレスターに5発を叩き込まれた試合がその象徴だが、8月下旬のリーグカップでも3部のMKドンズ相手に4失点を喫した。そして、守備が崩壊した理由をひとつずつ辿っていくと、新チームの“失敗”が数珠つなぎに見えてくる。
 先週末のウェストハム戦では、それまで左SBを務めていたマルコス・ロホと、いきなりアカデミーから引き上げられた19歳のパディ・マクネアーがCBでコンビを組んだ。その1週前のレスター戦で退場するまでは、同じくトップに昇格したばかりのタイラー・ブラケットがずっと先発していた。それだけで、台所事情が苦しいのはひと目でわかる。
 CBの頭数が足らなくなった原因はふたつ。1つめは、ケガ人の続出だ。
 現在、フィル・ジョーンズ、クリス・スモーリング、ジョニー・エヴァンスの3人が離脱しており、これが若手起用を余儀なくされた直接の原因だ。故障リストに関しては守備陣に限らずチーム全体の問題点で、マイケル・キャリック、マルワヌ・フェライニも長期離脱中、他にも開幕から入れ替わり立ち替わりにケガ人が出ており、つい先日もアンデル・エレーラが肋骨の骨折で戦列を離れることが分かったばかり。世界で最もスピードとフィジカルを要求されるプレミアリーグで頂点に立つには、ケガを極力減らすことが鉄則。余談だが、アーセナルがいつまで経っても優勝できない理由もここにある。
 この件に関してはファン・ハールも問題視しており、すでに2007年からフィットネスコーチを務めてきたトニー・ストラドウィックをトップチームの管理から外し、自らが連れてきたオランダ人コーチに重要な役割を任せて対応している。ただ、過去にダビド・デ・ヘアやハビエル・エルナンデス、香川真司の肉体改造を行ってきた実績があるストラドウィックだけに責任を負わせるのは無理があり、一部タブロイド紙では、2年前からクラブのスポンサーとして医療設備を提供している東芝メディカルシステムズ社までやり玉に挙げられている。また、問題解決のため、近日中にサウサンプトンの敏腕フィジオを引き抜くという噂もあり、クラブも策は練っているようだ。

wfc_tach|夏の補強によりリーダーが不在となったDF陣

 第二の原因は、夏の補強の失敗。
 もちろん、それは誰が見ても超一流であるラダメル・ファルカオとアンヘル・ディ・マリアの獲得を指しているわけではない。問題だったのは、守備の補強を疎かにしたことだ。この夏、約1億5000万ポンドをマーケットに投じながら、守備的な選手の獲得はルーク・ショーとマルコス・ロホ、ダレイ・ブリントだけだった。
 左SBのショーは即戦力でもあるが未来への布石で、どちらかといえば攻撃力が売り。ブリントはここまでの起用法を見るとMFとしてカウントされている。左SBとCBをこなせるロホはヒットになりそうだが、それでもCBをもう1人獲得すべきだったというのが英国メディアの総意だ。
 攻撃偏重、しかもレフティーばかりというアンバランスなチーム作りは、記者たちには「基礎工事が残っているのに屋根を付けた」と嘲笑され、元オランダ代表のルート・フリットには「前線と中盤を補強するだけなんて、プレミアをナメている」と痛烈に批判された。
 加えて、リオ・ファーディナンド、ネマニャ・ヴィディッチ、パトリス・エヴラというベテランを一斉放出したのもまずかった。守備陣にリーダーがいなくなってしまったのだ。新戦術の3バックと4バックを併用しながら、自分のことで精一杯の若手や新加入選手だけで守備の組織を作るのは到底無理だ。いくら指揮官が戦術を叩き込んでも、実際のピッチで状況を打開できるのは選手だけ。それには、いくらスピードが衰えていても、ヴィディッチやファーディナンドのように的確な指示を出して陣形を建て直せる人材が不可欠だった。たとえば、3-5で敗れたレスター戦では、個々の守備力よりもポジショニングのズレから失点するシーンが多発した。リーダー不在の影響は顕著に出ている。

wfc_fanh|アンバランスの中に隠れた光明と期待感

 だが、裏を返せば、これらはすべて「産みの苦しみ」でもある。
 乱暴な言い方だが、守備に関しては、1月に優れたCBを獲得し、これから復帰してくる生え抜きのエヴァンスやイングランド代表のジョーンズ&スモーリングにリーダーの自覚を促し、若手を継続的に起用して経験を積んでもらうしかない。それを一瞬で実現させる“魔法の杖”は、ファン・ハールに限らず世界中のどんな監督も持ち合わせていないのだ。
 だから今は、欠点をあげつらうよりも、チームにそこはかとなく漂う“期待感”に注目すべきだ。確かに前がかりでアンバランスだが、ディ・マリアとファルカオが加わった攻撃陣には近年のユナイテッドにはなかった“爆発力”が感じられる。今はまだそれぞれの個の力に頼っている印象だが、それでも十分な数のチャンスを作っており、このまま彼らがウェイン・ルーニーやロビン・ファン・ペルシーとの相互理解を深めれば、デイヴィッド・モイーズ時代はもちろん、アレックス・ファーガソン時代にも見られなかったような創造性と破壊力が見られるかもしれない。
 ファン・ハールが何年で後進のライアン・ギグスに道を譲るつもりなのかはわからないが、彼は間違いなく“ファーガソン後”の新しいスタンダードを作ろうとしている。今はまだ脆さが目立つ。しかし正直、見ていてこれほどロマンを感じさせるマンチェスター・ユナイテッドは久しぶりだ。
 新しい常勝軍団になるか、寄せ集めの集団になるか。それは紙一重だが、前者の殻を破る兆候が少しでも見られる以上、マンチェスター・ユナイテッドは“いま、この瞬間”が最も見逃せないタイミングなのだ。

(文:寺沢薫)

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